ぷんギターズ Blog

ぷんギターズ【公式】のブログ。アコースティックギター、ヴィンテージギター、好きなことをぽつぽつと。ピエール・ベンスーザン、ジェイソン・ムラーズ、森山直太朗、ジュリアン・ラージが特に大好物

【完結編】もっとトラゴット(矢後さん弾いた!ジェフ喜んだ!)

前回からの続き。

 

無事に日本にやってきた僕のトラゴット2号機。…と思いきや、サウンドホール内部に不思議なヘンテコ物体を発見したところまでは前回お伝えした通りですが…

 

これ、なんだかわかった方いらっしゃいましたかね?

 

売主に確認したところ、これでした。

 

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Sageworksというアメリカのメーカーのギターサポート器具で、ギターを高く構えやすくするために膝の上に置く補助器具です。この補助器具をギターにしっかり固定するための専用マグネット(※下の写真の右下)が、トラゴット二号機の内部に取り残されていたという事のようです。 

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「こういうのは事前に取り外しておいてよぉ…」とも思いましたし、「そうでなくともせめて『内部にマグネットが2個くっついてるよ』くらい説明は事前にあってしかるべしでしょおぉ…」とも正直思いましたが…

 

この専用マグネット。3M製の『コマンドタブ』という両面テープで接着されていたというのがせめてもの救いでした。

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このテープ、さすが天下の3Mの製品だけあって、めちゃくちゃ優秀なんですよ。めっちゃ強力な粘着力なのに、剥がしたいときは跡形も無く綺麗に剥がせるという、魔法のような両面テープなのです。

 

それなら自分でも剥がせるじゃん!

 

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ということで、早速チャレンジ。3Mの文字のある白いタブの部分を引っ張るのですが、ひとつ気をつけなければならないのは、接着面と平行に引っ張らないと途中で切れてしまうリスクがあるという点です。そして今回の場合は、ギター内部という非常にデリケートな場所に設置されていて、かつ、サイドのブラジリアンローズウッドに接着されているので、白いタブを引っ張る方向にあまりスペースがないというのが非常に厄介でした。

 

サウンドホールに手を入れて、指先だけのコントロールでゆっくり慎重に白いタブを引っ張ると…

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このテープ、メチャメチャのび〜〜〜〜る!!!ww

 

これだけ引っ張っても、マグネットが取れそうな気配は全くありません。さすが強力粘着です。たぶん、写真のびよーーーんと伸びた部分が倍以上の長さになるまで引っ張らないと取れないのだと思われます。ぐぬぬ…。まだまだこの慎重かつ繊細な作業を続けなければいけないのかと思うと、だんだんプレッシャーが…(>_<)

  

・・・と、ここでぷんさん急にヒヨリはじめます。

 

サウンドホールに手を突っ込んで…

希少な1890年代伐採のハカランダに固定されたマグネットから…

指先だけの微細な動きで慎重に両面テープを引っ張り続ける…

 

下手をすれば、手首でトップ材にダメージを与えてしまうかもしれない…

無理にテープを剥がそうとすれば、美しいサイドのハカランダにクラックを生じさせてしまうかもしれない…

 

しかもまだ1個目のマグネットすら取り外せていない…

これが仮にうまく取れたとしても、まだもう1個あるんだぞ…

 

ここまで何気なく行っていたこの作業が、実はどれだけのリスクを抱えながらの作業だったのかという当たり前の事実に、今更ながら、急に恐れを抱いてしまったのです。

こうなるともうダメですね。サウンドホールに手を入れることを想像しただけでも怖くなってくる。

 

力みすぎて過ぎてしまって、手首でサウンドホールを破壊…

更にはテープを無理やり引っ張りすぎて、ハカランダも破壊…

 

…っていう悪いイメージしか頭の中に浮かばなくなってしまいました(笑)。お豆腐クラスのメンタルの弱さに、我ながら笑ってしまいます。

 

 

もはや自分でやる自信は完全に喪失。どうせコンディションチェックもしてもらうつもりだったし、このマグネットの取り外しも含めて、まとめてプロにお願いしようということになりました。

 

お願いしたのは、いつもお世話になっているワタナベ楽器京都本店 村主副店長経由での、これまたいつもお世話になっている岩城弦楽器工房 岩城さん。

 

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ワタナベ楽器京都本店に無事到着したトラゴット二号機。

 

そして遂に・・・

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取れたぁぁぁぁぁ!!!!

いやはや、プロにかかればなんでもない作業なんでしょうけど、あの作業を自分でやることの恐怖心をイヤというほど刷り込まれてしまったボクからすると、めちゃくちゃすごいな、リペア職人さんって・・・。本当にありがたいことです。岩城さん、ありがとうございます!!!

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ようやくヘンテコな物体が取り外されたサイドは、ブラジリアンローズウッドの黒く真っ直ぐな杢目がとても美しく輝きます。やっぱり個人的には、アコースティックギターの内部は、美しい材以外には余計なものが一切ないほうが好きですね。

しかも村主副店長によると、このヘンテコ物体、強力マグネットゆえにかなりの重量があったそうで、それが2つもサイドにくっついていたことで、サウンドにもずいぶん影響があったことがわかったそうです。取り外したことで、よりオープンな抜けの良いサウンドになったとのこと。これは本当に嬉しい限り!

 

いったいどんなサウンドに???

 

じゃーーーん!こちら初公開!!!

ワタナベ楽器さんを訪れた人気ギタリストの矢後憲太さんが、ヘンテコ物体が取り外された直後に試奏してくださったのです!

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リズミカルな矢後さんの素晴らしい楽曲に追従するように、歯切れのよくて、太くて芯がある。がつんと食いついてくるような迫力のあるサウンドですよね。一号機のジャーマンとは、これを聞くだけでもかなり違ったサウンドニュアンスを持っているような気がします。

更にもう一曲。こちらは数週間前にワタナベ楽器YouTubeチャンネルで公開された動画なので、既にご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

youtu.be

 

こちらは一曲目とは趣の異なる荘厳なスケール感が印象的です。トラゴットのサウンドもリバーヴ感たっぷりで、重厚なゴージャスサウンドです。まぁ弾き手が矢後さんですから、もはやタッチ次第でサウンドはいかようにでも表現できてしまうということだと思います。

なお村主副店長に聞いたところによると、矢後さんはギターの試奏動画を撮影する際には、それぞれのギターサウンドの特徴をじっくりしっかり理解した後、それぞれのギターに一番適した楽曲を選んで演奏されるそうです。さすがプロフェッショナルですよね。そして、わざわざボクのギターで2曲も弾いてくださって、矢後さん、本当にありがとうございます!!!

→矢後憲太さんのホームページはこちら!

矢後憲太 Official Home Page ~アコースティック阿漕~ - 矢後憲太officialHP

 

ちなみにこの2016年製アディロントップ個体が無事に日本に届いた後、このギターの製作者であるジェフ・トラゴット氏に久しぶりに連絡を取ってみました。

 

半年振りにきたジェフからのメールは、それはそれはとても温かいものでした。

 

ぷんスーザン。ひさしぶりに連絡をくれてありがとう。こちらからも連絡しようと何度か思っていたんだけど、年末はギターの製作や、クリスマスやらの家族イベントでいつだって忙殺されてしまうね。

そしてこのギターが売りに出たことは知っていたが、ぷんスーザンが購入してくれたと知ってびっくりしたし、とても興奮しているよ!!ありがとう!!!

このギターは、君の知っているとおり、最初は日本で販売されたんだけれど、それからほとんど時間を置かずに、再びアメリカのDream Guitarsで売りに出されていたんだ。その後、どういう人が所有していたのかは知らないけれど、今こうやってこのギターが君のもとにあるのなら、もう安心だよ。とても嬉しいよ。

アディロンダックスプルースとジャーマンスプルースを比較すると、アディロンの方が少し硬質な材で、サウンド面でも成熟して真価を発揮するまでに少し時間がかかるんだ。だから、僕のギターではジャーマンスプルースを使うことがとても多いんだけれど、この二つの材はすごく似た性質を持っているよ。これまで他のいろいろな材を使ったこともあるけれど、大好きなサウンドという意味では、どうしてもこの二つのスプルースに戻ってきてしまうんだ。

(以後、略)

Best, Jeff 

 

もうジェフさんね、ほんと素敵・・・。包容力のかたまり。そしてこの人間力よ。

 

ここで改めて思うんですが・・・

やっぱりアコースティックギターって、作り手の人柄が大いに影響するような気がしてなりません。今回のギター購入も、いろんなハプニングがありましたが、村主さん、岩城さん、矢後さん、ジェフ・・・。新品で販売されて以来、数年ぶりに日本にカムバックしてきた早々から、このような素敵な皆様に温かく迎えられたこのギター、そしてこのギターとこれから楽しいギターライフを送ることのできる僕はとっても幸せものですね。

今回も素敵なストーリー、皆さん本当にありがとうございました!!!

 

【2019年7月追記】

この記事から約半年後、2本のTraugott Model Rを研究材料としたジャーマン、アディロンの弾き比べ企画を実施しました。以下のリンクからご覧ください。

blog.punguitars.com

 

(完)

 

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