ぷんギターズ Blog

ぷんギターズ【公式】のブログ。アコースティックギター、ヴィンテージギター、好きなことをぽつぽつと。ピエール・ベンスーザン、ジェイソン・ムラーズ、森山直太朗、ジュリアン・ラージが特に大好物

ジェフ・トラゴットから学ぶ 楽しいスプルース選び 〜ジャーマン or アディロンダック〜【後編】

前回からの続きです。

 

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左: Jeff Traugott Model R (アディロン & ブラジリアン、2016年9月完成)

右: Jeff Traugott Model R (ジャーマン & ブラジリアン、2018年4月完成)

 

この2本のギターを研究対象として、大抵の場合アップチャージ対象のオプションとなっているトップ材の代表格とも言える2つのスプルース材、“アディロンダック・スプルース(=アメリカ産)”と“ジャーマン・スプルース(=ヨーロッパ産)”のサウンド傾向が、実際どう異なるのかを検証してみようという今回の試み。

 

トップ材の違いによるサウンド影響については、既に世の中たくさんの情報や見解が溢れていますし、僕自身もこれまで沢山の情報を浴びるように収集しまくっていますので、正直言って、既にボクの中になんらかの先入観が出来上がってしまっていることは否定できません。

それぞれの材の特徴に関して、知らず知らずのうちに擦り込まれてしまったステレオタイプなサウンドイメージ。もっと正確に言うと、それらのサウンドイメージを言葉で説明しようとしたときに使いたくなる単語やフレーズが、なんらかの形で、ボクの頭の中でパターン認識されてしまっているような気がします。

例えば、ジャーマンなら『煌びやかなサウンド』、アディロンなら『コシや粘り、パンチのある迫力のサウンド』…みたいなやつです。もっと他にも、もしかしたらみなさんの中にも、それらのサウンドイメージを表現するための単語やフレーズがいくつかのカテゴリーに仕分けられて、格納されているのではないでしょうか。

 

実を言うと、今回2本のトラゴットをじっくり弾き比べてみた結果の正直な印象として、煌びやかなジャーマン、コシや粘りやパンチのあるアディロン、というような巷でよく見かける表現も、あながち間違った説明ではないと感じています。あえてものすごく雑に言えば、ジャーマンは実際キラキラしてるし、アディロンは実際ガツンと響いてきます(←ほんと雑ですみません)。

 

ただ、これはこの2本のギターを比較した場合のあくまで相対的な印象の違いを説明しているに過ぎません。つまり、煌びやかなサウンドが好きだからといって必ずしもジャーマンがベターとは限らないし、同様に煌びやかなサウンドが好きだからといって必ずしもアディロンが適さないとも限らないわけです。逆にガツン系のサウンドが好きな場合もしかりです。

 

とはいえ、それぞれの材において、なんらかの特徴の違いが存在することは確かに感じられたので、あくまで相対的な印象であることを重ねてしつこくお断りした上で、大きく2つの点で、今回のトラゴット2本での検証を通じて感じられた違いを言語化してみました。

なお、以下はあくまでJeff Traugott Model Rでのトップ材の違いによる印象であって、ギターの作り手が違ったり、同じ作り手のギターでも内部構造などがそれぞれ異なるギターの場合などは、同じトップ材であっても必ずしも同じ印象になるとは限りませんので、あしからずですペコリ。

 

ポイント①

ジャーマンは高音域成分寄り。比してアディロンはローミッド成分寄り。ジャーマンは煌めくゴージャス感、アディロンはパンチの効いた重厚なクリスタル感…というような、相対的な立ち位置(ポジショニング)の違いは、確かに感じる。

 

ポイント②

ジャーマンは弦を弾いた瞬間から、“基音が倍音に包まれている” ような感じがあって、その結果、空間系の拡がりサウンド傾向を感じる。比してアディロンは、弦を弾いた瞬間から立ち上がり早く、“基音が太く出て、そのままバラけずに力強く前に飛んでいくような” サウンド傾向を感じる。そして音が伸びていくに連れて、“少し遅れて倍音が湧きあがり、基音が少しずつ倍音を纏っていく” ような感覚もある。

 

 

この感じ、何に例えるのがいいのだろう…と、前回の更新からずっと2週間考え続けて、なんとか辿り着いたビジュアルイメージがこれです…笑

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写真左上のあたりの、まだ波頭が砕けていない深いブルーの波がアディロン。サーファーの真上あたりで、波頭が飛沫をあげて砕け始めたエメラルドグリーンがかった波がジャーマン。どちらのサウンド(波)も、音が放たれた後に写真右方向のような状態に遷移し、倍音(白い波しぶき)を纏いながら減衰していく…というイメージです。

 

ちなみに、そもそも音というものは空気などの物質を伝わる波であるということを考えると、その音の傾向の違いをビジュアル化して例えてみようと思って辿り着いたのが、奇しくも海の波の写真だったというのは、我ながらちょっと興味深いなぁ…と感じています。

 

なお、他のパターンとして考えたけど、結局ボツにしたのは例えばこんなのです。

 

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これ普通のシャワー…

 

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打たせ湯的なシャワー…アディロン?

 

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ハイブリッド型シャワー…ジャーマン?
 

 みたいな…(ボツ!)

 

 

・・・。

 

 

さてさて。

同じルシアーのモデルと言えども、当然ある程度の個体差は存在するのは承知の上で、2019年6月時点のボクの2本のトラゴットのサウンドに比較的近いと思える試奏動画を、参考までに紹介しておきますね。

 

まずは満34ヶ月のアディロンのModel R。サウンドはこれに近いです。っていうか、うちの子、この個体そのものです(笑)


2016 Traugott R, Brazilian Rosewood & Adirondack Spruce

 

パンチの効いた立ち上がり、硬質かつ重厚なクリスタル感が伝わるでしょうか。

続いて、満14ヶ月のジャーマンのModel Rのサウンドは、これに近いです。


2008 Traugott Model R Brazilian/German at Dream Guitars

 

実際には、ここまで倍音溢れまくりの感じではないのですが、特性を分かりやすくするために、実際よりも倍音を誇張して大盛りにすると、たぶんこんな感じだと思います。最初から最後まで、倍音を纏ってる感じが伝わりますでしょうか。

 

実はボク個人の好みの傾向としては、仮にどちらか一方しか選べないとすれば、倍音溢れるゴージャスなサウンドよりも、芯が太くてしっかりしているサウンドの方に好みの傾向は寄っていると思っています。

ジェフ・トラゴットのギターは、ジェフのフェイバリットがジャーマン&ブラジリアンの組み合わせであることもあってか、これまで製作された個体のたぶん90%以上がジャーマントップだと思われるので、そういう意味ではトラゴットのシグネチャーサウンドはやはりジャーマントップ。倍音がしっかり感じられるサウンドの方なんだと思います。

ただボクの個人的な好みの観点では、ジャーマントップの方に圧倒的に分があると感じているかというと、必ずしもそうではないです。正直どちらもそれぞれ異なる魅力があり、仮にどうしてもどちらか一本を手放さなければならないとなった場合、もしかしたら手元に残すのはあえてアディロンを…という判断もあり得なくもないかなぁ、という気もするくらい、どちらもそれぞれの良さが感じられます。

 

…なーんて言いながらも、絶対にジャーマンのほうも手放したくないと思わせる試奏動画があるんです。たぶん製作後10年以上は経過していると思われるジャーマントップのModel R。少し長い動画ですが、前半はフリーの試奏、後半にプロミュージシャンの本気の弾き語りが聴けます。

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どうでしょうか?先程紹介した比較的若いジャーマン個体と共通の倍音傾向が感じられながら、更に圧倒的な軽やかさというか、まるで数十年経過したヴィンテージギターのような圧倒的な抜けの良さや、タッチへの反応の速さ、レスポンスの良さがびんびん感じられます。スゴイ!!

 

このように、製作後10年間、あるいはそれ以上の年月をかけてしっかり弾き込まれることで仕上がった、この軽やかでレスポンスの良いサウンドこそが、本当の意味でのトラゴットシグネチャーサウンドなのではないかと感じています。このサウンドは本当に好き。一生愛せる(笑)。このサウンドに辿り着くのが楽しみで仕方ないからこそ、アディロン個体だけでなく、ジャーマン個体も手放せないんです。本当のトラゴットシグネチャーサウンドを鳴らせる日まで、責任を持って育てないといけません!

 

なお、同じように10年とかそれ以上経過したアディロン個体の経年変化後のサウンドも知りたいんですが、少なくともネット上にはあまり良いサンプルがないんですよね。

以前ジェフ本人から、『アディロンはジャーマンと似た特性を持っているけれども、その本領を発揮するまでに、アディロンの方がジャーマンよりも長い時間がかかる』という話を聞いたことがあるので、長い期間をかければ、また少し違った傾向のサウンドに変化していく可能性もあるのかもしれません。なので、5年とか10年後くらいにまた記事にしましょうかね。ブログ、それまで続けられてるかな…笑

 

 

そして最後に…

ひとつ白状しなければならないことがあります。

 

今回なぜこのタイミングで、ジャーマンとアディロンのサウンド比較を真剣に検証したくなったのか? 

 

それは…

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1890年代に伐採された、ジェフ・トラゴット秘蔵のオールドグロウスハカランダ材。プリウォーマーティンにも実際に使用された材と同じだというこの特別なブラジリアンローズウッドに組み合わせるトップ材は、果たしてどうしたものかと…。

 

実はここ数ヶ月、ジャーマンにするか、アディロンにするかで、ずっと迷いに迷っていたからなんです…。

 

 

 

そしてここだけの話、

実はまだ、決断できておりません…恥(T . T)

★☆ そして告知!!☆★

新連載『もっともっとトラゴット』

2020年春(予定)、乞うご期待!

 

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